心身症には、胃潰瘍、喘息、アトピーやじんましん、円形脱毛症、高血圧、頭痛やリウマチなども含まれます。
発症の原因は多様なため、「ストレス」の要因が顕著な場合やいろいろと無理をしているにも関わらず、意識下にない場合もございます。
心身症とは、何がしかのストレスによって、「身体が悲鳴をあげている状態」と考えると理解しやすいかもしれません。
ただし、免疫力の低下など、身体疾患が症状に影を落としている可能性も珍しくありませんので、身体疾患の精査を決して怠らないよう努めます。

Not only psycliatric services we can provide general medicine servis .
For the prevent of cerebrovasalar disease , We must take a contiruous attention to hypertension hyperglycemia and also hyperlipemia.
These uncontrolled condition will cause serious result.

心身症

現代のわれわれの生活は、職場、学校、家庭などあらゆる場面でさまざまなストレスを感じることが多くなっていますが、そのようなときに胃が痛くなったり、下痢をしたり、頭や腰が痛くなったり、あるいは高血圧や糖尿病などの症状が悪化したりするということは、広く認識されるようになりました。
このようにストレスがたまる状況と関連して一定パターンの身体症状が出現したり悪化したりする場合、その病態を心身症と呼びます。

心身症とは

日本心身医学会の指針によると、心身症とは「身体疾患の中で、その発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態」のことです。この定義の中で特に大切なのは「身体疾患の中で」という部分です。つまり心身症とは、本書の対象である「こころの病気」ではなく、「体の病気」であると考えなくてはならないわけです。それは内臓の構造の(器質的)異常や働きの(機能的)異常を伴っており「神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」とされています。
それではなぜ、心身症が本書で扱われるのでしょうか。詳しくは後に「原因」の項で述べますが、それは「その発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与」するからです。つまり、身体の病気なのですが、心理的あるいは社会的な(対人関係にかかわる)要因(さきに「ストレス」といったものに相当します)が大きくかかわって、症状が発現したり悪化したりする場合に、心身症と呼ばれるわけです。
具体的には、身体の病気で内科なり整形外科なりにかかって治療を受けてもなかなか症状が改善しなかったり、いったんよくなった病気が何らかのきっかけで再発を繰り返したりする場合に、心身症と考えて治療する必要性が出てきます。
ここで心身症ではない病態を例にあげるとわかりやすくなるでしょう。心身症ではないのは、たとえば「心因性の」身体症状と呼ばれるものです。とてもいやなことがあって、もうそのことはいっさい聞きたくないといった状況下で、急に耳が聞こえなくなることがあります(心因性難聴)。ところが、通常こういった場合には、身体の構造の異常も働きの異常も認められないのです。これは「転換性障害」と呼ばれる神経症性障害の一つであり、「こころの病気」です。
このような心因性難聴の場合には、「きっと人のいうことをもう聞きたくないんだろう」といった象徴的な解釈ができそうに思えることが多いのですが、心身症では、むしろ症状にそのような象徴的な意味づけができないのが一般的です。

症状

右の説明からもわかるように、心身症はあらゆる「体の病気」でおこりえますが、特に心身症とみなされることの多いものを、表1にあげました。
ここで注意していただきたいのが、*印をつけた過換気症候群、摂食障害、自律神経失調症、月経前症候群、更年期障害といった病態です。これらは頻度もかなり高く、心身症を専門的に診る心療内科の外来にもよく受診する病気ですが、それぞれ厳密な意味での心身症とは言い切れない面があります。
まず、「過換気症候群」は、「過呼吸症候群」とも呼ばれ、過呼吸の症状が現れるものですが、神経症性障害に含まれる「パニック障害」と半分程度重なる病態です。パニック障害とはさまざまな身体症状を伴う不安発作を繰り返す病態ですが、その不安発作の約半数に過呼吸が認められるとされています。
次に「摂食障害」は、病的なやせと、さまざまな身体の不調をきたすという面からみると、確かに体の病気と考えることもできますが、精神面でも考え方や感じ方に柔軟性が乏しかったり、対人関係を築く力が不足していることが多く、こころの病気と考えられる面もあります。しかし、何よりも食行動という「行動面」の障害が一番の特徴であり、そういう意味では、心身症とも神経症性障害とも違う独特の位置づけをもった病気といえます。
「自律神経失調症」は、不定愁訴症候群などとも呼ばれ、めまい感、動悸、息切れ、頭重・頭痛、腹痛、下痢、しびれ、痛みなど、さまざまな身体症状を呈します。身体面のはっきりとした機能的・器質的異常が認められないことが多く、そういう場合には心身症とはいえず、神経症性障害に含まれることになります。さらに、従来、自律神経失調症と呼ばれてきた病態の半分以上は、パニック障害か軽症うつ病と考えたほうがよいことも明らかになってきています。
「月経前症候群」とは、月経前の約1週間にさまざまな自律神経失調症状とともに抑うつや不安などの精神症状をきたす病態ですが、その一部はうつ病のカテゴリーに含めてとらえたほうがよいことが指摘されており、治療にもある種の抗うつ薬が非常に効果的であることが知られています。
「更年期障害」は、女性の更年期にさまざまな自律神経失調症状や抑うつ・不安などの精神症状をきたす病態ですが、これも前記の自律神経失調症と同じように、心身症としての病態のほかに、うつ病や神経症性障害を含んでいると考えられます。
以下本章では、まず比較的厳密な意味での心身症を対象にして、原因、治療、予後、生活へのアドバイス、家族や周囲の人の対処法、間違いやすい病気など、さまざまな心身症に共通した事柄について説明します。そしてさらに、臨床的に問題になることが多い、過敏性腸症候群、消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)、頭痛(緊張型頭痛・片頭痛)、痙性斜頸、気管支喘息、本態性高血圧、糖尿病について、項を改めて、症状の特徴や治療の方法などを補足することにしたいと思います。

心身症がしばしば認められる身体疾患
呼吸器系 気管支喘息、過換気症候群*
循環器系 本能性高血圧、狭心症、心筋梗塞、不整脈
消化器系 過敏性腸症候群、胃・十二指腸潰瘍
内分泌・代謝系 糖尿病、甲状腺機能亢進症、摂食障害*
神経・筋肉系 緊張型頭痛、偏頭痛、痙性斜頸、書痙、自律神経失調症*
皮膚系領域 アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、円形脱毛症
整形外科領域 頸肩腕症候群、腰痛症、慢性関節リウマチ
婦人科領域 月経前症候群*、月経異常、更年期障害

よく発症する年代

病気によってまちまちですが、診療内科に心身症のために受診する患者さんの内訳をみると、女性は20代から30代が、男性は30代から40代が最も多くなっており、それぞれ職場や家庭内におけるストレスが多くなる時期と重なっている可能性があります。

原因

心身症の発症や増悪(悪化)には、さきに述べたように心理的あるいは社会的な要因が大きくかかわっていると考えられています。そのメカニズムはいまだ十分に解明されていない部分も多いのですが、持続するストレスが中枢神経系(脳)を介して、自律神経系、内分泌系、免疫系といった生体機能調節系(身体の状態を常に一定に保つ働きをする生体内システム)に影響を与え、それがある程度以上つづくと、内臓の働きや構造に異常をきたすと考えられています。したがって、ここには広い意味での「学習」がかかわっている(身体に悪い癖がついてしまう)と考えることもできます。またその際、どの内臓に異常をきたすかは、もともと弱いところに出る、ストレスの種類によって決まる、性格傾向(ストレスへの対処の仕方と関係します)によって決まってくる、といった考え方があります。
それに対して、心因性の身体症状の場合は、異常が認められるのが、運動(例、手足が動かなくなったり、声が出なくなる)や五感(例、目が見えなくなる、耳が聞こえなくなる)など、意識にかなり近い身体の働きであることが特徴であり、精神面の状態に応じて大きく変化する症状になることがほとんどです。

治療

■薬物療法

 心身症は体の病気ですから、まず、十分な身体医学的な治療がなされなければなりません。詳しくはそれぞれの病気の説明にゆずりますが、過敏性腸症候群であれば、腸の運動を調整する薬、気管支喘息であれば気管支を広げる薬、本態性高血圧であれば血圧を下げる薬、糖尿病であれば血糖値を下げるための薬などが用いられます。
 その一方で、心身症患者では、心身の緊張、不安、抑うつといった精神症状が認められることも多く、その緩和には、抗不安薬(安定剤)や抗うつ薬の投与が有効です(専門的な治療を受けるには、心療内科や精神科に受診することが必要です)。

■生活習慣の是正(生活のアドバイス)

 心身症は、前述のとおり慢性の身体疾患であることが多く、生活習慣病といわれる疾患群とかなり重なってきます。そして、ストレスの多い生活を送っていると、食事、運動、飲酒、喫煙、休養といった生活習慣は乱れがちになり、それがさらにこれらの病気を悪化させることになります。
 たとえば、高血圧であれば塩分を控え目にする、糖尿病であればカロリーを控えめにして定期的な運動を行うなどの食事療法や運動療法が、治療の大きな手段になってきますし、過敏性腸症候群や消化性潰瘍であれば刺激物をさける、気管支喘息であれば喫煙を控えるといった取り組みが症状の改善につながります。
 さらに、直接病気の治療と関係しなくても、生活習慣を規則正しくすることは、ストレスに対する心身の全般的な抵抗性を高めますので、心身症の治療にはたいへん有効といえます。

■リラクセーション法

 ストレスは慢性の心身の緊張状態を作り出し、それがさまざまな身体の障害をもたらすと考えられていますが、その影響を緩和するためには、さまざまなリラクセーション法が非常に有効です。毎日定期的に練習をつづけていくことにより、ストレスに対する身体の反応性自体が変わってくることも知られています。

■認知行動療法 

 以上の治療法は、内科のようにおもに身体面を診てもらう診療科にかかりながら、自分で工夫や努力することで効果をあげられるものですが、それでもよくならない場合には、心療内科や精神科にかかったり、カウセリングを受けることが必要になります。
 そのような場合には、偏った思考・行動パターン(ストレスに対する対処のまずさや生活習慣の頑固なゆがみなどと関連します)のためにストレスの影響を被りやすくなり、身体の悪い癖が抜けなくなっていることが多いため、悪い習慣を修正し、新しいよい習慣を身につけるための認知行動法という方法が有効です。
心身症では、ストレスによって症状が発現したり悪化したりすると考えられているわけですが、認知行動療法の治療の対象になるのは、病気の発症にかかわる部分ではなく、持続(症状がよくならずにつづいていくこと)にかかわる部分です。仮に病気の発症に心理社会的な要因がかかわっていたとしても、それは今からではどうしようもないことが多いものです。その一方で、身体の悪い癖を持続させる要因を変えていくことができれば、即病気がよくなっていくことにつながっていきます。
 そのためには、個々のケースごとに、おのおのの症状や問題を持続させている要因を明らかにしていきます。具体的には①どんな状況でおこっているのか(症状や問題が現れる状況の評価)、②本人のどんな特徴(身体的・心理的)が関連しているのか(ストレスに対する弱さの評価)、③その症状や問題によってどのような結果がもたらされているのか(長期的には不都合でも短期的に都合のよい結果が得られると持続要因になる)の3点を評価して、それぞれに対して治療者と患者が協力して解決策を講じていくことになります。

予後

 以上のような多面的な治療を行っていくと、だいたいのケースは半年くらいでかなり改善し、あとは身体的な治療と自分の力でセルフコントロールできるようになることがほとんどです。
 ただし、なかにはなかなか抗不安薬や抗うつ薬の服薬がやめられない場合もありますし、認知行動療法を行っても偏った思考.行動パターンがなかなか変えられず、一向に改善に向かわないケースもあります。そのような場合には、現状維持をまずは目標にして、あとは長い時間をかけて徐々に行動や考え方を変えていくようにする必要があります。

 家族や周囲の人の対処法

周囲の人との満足できる人間関係(ソーシャルサポートとよばれます)はストレスの影響を緩和することが知られていますが、その一方で対人関係は、ストレスの原因として最も頻度の高いものであることも示されています。したがって、家族や周囲の人がどう対応するかはかなり大きな影響をもつことになります。
具体的には、過度な協力関係が重要といえるかもしれません。もちろんほったらかしはマイナスですが、過干渉や過保護もマイナスに働くことが多いものです。それから、うまくできていないときに叱ったり逐一指示したりするよりは、うまくできているときに誉めてもちあげてあげることのほうが、ずっとうまくいくことが多いことも確かです。

 間違いやすい病気

「心身症とは」の項であげた心因性の身体症状を伴う転換性障害、「症状」の項であげたパニック障害、軽症うつ病などが、心身症と境を接する病態です。特にパニック障害とうつ病は薬物療法が非常に有効な病気であるため、診断を誤らないようにすることが重要です。
また、さきに説明した過換気症候群、摂食障害、自律神経失調症、月経前症候群、更年期障害などは、場合によっては心身症とみなすことが適切ですが、神経症性障害、気分障害、行動の障害などが主となることもあるので、個々のケースごとに評価することが重要になります。

熊野宏昭.心身症 樋口輝彦・野村総一郎(編) こころの医学事典 日本評論社 pp.233-237.

心因性めまいを示唆する症候

  鑑別すべき器質的疾患 心因性めまいの特徴
胸痛、呼吸困難、動悸 不整脈、心筋梗塞などによる血圧低下・ショック 胸部症状を伴うが血行動態が安定
頭痛、感覚障害、脱力 頭蓋内病変(特に延髄外側症候群) 両側の感覚障害や脱力
起立時に増悪 起立性低血圧 起立性低血圧の欠如
小脳疾患・深部感覚障害 不安のため後ろに体重を傾けて起き上がることを拒否する
過呼吸にて誘発 前庭機能障害 不安が先行
開眼を嫌がる 前庭機能障害 眼振がない

 

Waddell徴候

徴候 略称 非器質的疾患の特徴
圧痛 superficial 軽くつまむだけで腰部が広範囲に痛む
nonanatomic 局在しない広範囲の深部の痛み
擬似負荷試験 axial loading 立位で頭を軽く押さえると腰痛を誘発する
rotation 肩と骨盤を一体のまま回旋させると腰痛を誘発する
気そらし試験 distraction 下肢伸展拳上試験を坐位で行うと陰性化する
神経学的所見 weakness 歯車様固縮を伴う膝崩れ(多数の筋群が関連する)
sensory デルマトームに沿わないストッキング型の感覚障害
過剰反応 over-reaction 診察中の不釣合いな発言、表情、筋緊張、振戦、虚脱、発汗

Waddell G,et al:Nonorganic physical signs in low-back pain.Spine(Phila Pa 1976).5(2):117-25,1980(PMID:6446157)

頭部の非器質的疾患を示唆する所見

特徴 非器質的疾患の特徴
圧痛 軽くつまむだけで頸部が広範囲に痛む
局在しない広範囲の深部の痛み
擬似負荷試験 頭部と肩を一体のまま回旋させて頸部痛を誘発する
頸部回旋域制限 頸部回旋域が正常の半分以下に制限
神経学的所見 膝崩れや以前脱力があったにもかかわらず正常な筋力
デルマトームに沿わないストッキング型の感覚障害
過剰反応 極端な強直や動きの遅さ、3秒以上の患部擦過や把握、しかめっつら、ため息

上田剛士(2015).非器質性・心因性疾患を身体診察で診断するためのエビデンス 有限会社シーニュ

治療方法

まずは、お手数でしょうが、当クリニックへお越し下さい。