児童思春期の強迫性障害(OCD)の特徴

子どもにおいては、発達過程にみられる正常の範疇に属する強迫から強迫性障害とされる強迫までスペクトラムとして理解することが可能であり、児童期にみられる正常レベルの強迫は子どもが発達するために経過しなければならない課題ともいえる側面を持っている点である。例えば子どもがトイレット・トレーニングに応えて括約筋の自律機能を獲得していく際に、強迫的な儀式的行為は衝動コントロールのための欠くことのできないツールとなりうる。しかしこれらの強迫性がOCDへそのまま移行していくわけではないことは知られている。

強迫症状への自我違和性の不要さも子どものOCDの特徴となっている。臨床場面で見ていると、幼少の頃から症状への自我違和性をはっきりと有している子どもと、全く自我違和的でない(洞察性の乏しい)子ども、すなわち強迫症状を「別に変じゃない」と言い続ける子ども、との両者が存在することは間違いなさそうである。

症状として最もよく認める強迫観念は「汚染への不安」、「自分自身もしくは他人への危害を及ぼすことへの不安」、「対称性や完全さへの欲動」である。強迫行為では「過剰な洗浄」と「清掃」を先頭として、「確認」、「数かぞえ」、「繰り返し」の順となっている。多くの子どもは経過の中で洗浄と確認を認めており、その後時とともに変化していき、最終的に思春期の終わりにはほとんど全ての症状を経験してしまうこととなる。強迫観念だけ、もしくは強迫行為だけという子どもは極めて稀である。

児童思春期の症例においては男女に関係なく「自身の強迫症状に他者を巻き込み、強要する」という巻き込み症状が多いという報告を多く認めており、この点も小児期のOCDの特徴として挙げられる。

子どもにおいてはおおよそ200人に1人の割合でOCDを認める。児童期発症OCDに限ると、発症年齢は10歳前後と報告しているものが多い。ただし児童期発症OCDと成人期発症OCDとの区分はそれほど明確ではなく、思春期前の子どもにおいて大人の特徴を有していることも多分にあるため、このサブタイプ分けは未だ十分な検証がなされているとは言い切れない部分もあるが、OCDの一つの切口として理解しておく意義は高いと考える。

児童期発症OCDと成人期発症OCDの境界線は、強迫症状の出現が思春期の前であるか、後であるかで区別されている。OCD患者の男女比は、思春期を境に男性優位から女性優位へと移行していく。思春期までの男女比は2~3:1の比率であり、思春期とそれ以後ではその比率は逆転し、男女比は1:1.35である。男児の方が女児に比べ多い特徴としては、チック障害の併存が高い、疾患への遺伝子の関与する割合が高いといったことが挙げられる。